マーチ・スーパーターボのヘッドライトの強化


夜間の走行をより安全にするためにヘッドライトを明るくしようと思い、HID(ディスチャージ式のキセノンランプ)を装着してみた。多少明るくなったがまだ明るさは満足できなかった。
さらにHIDで問題なのは、点灯してから照度が上がるまでに一秒程のタイムラグがあることで、このタイムラグのためにH4用のHIDは昼間パッシングライトとしては役に立たなくて不自由なので、当初のハロゲンバルブ(ヨウ素球)に戻した。
その代わりに強力な補助前照灯としてシビエのミニオスカーを取り付けた。
さらにヘッドライト自体も強化しようと考えた。
ヘッドライトの回路はバッテリーからヒューズボックスを通り、ライトスイッチとロービーム・ハイビーム切り替えスイッチを経てヘッドライトに繋がっており、配線も長くなるし、スイッチでの電圧降下もある。さらに旧い車ではスイッチの焼損もあり、接触抵抗が増え、発熱となってエネルギーがロスしている。特に旧い車の場合、ビーム切り替えスイッチそのものが壊れるとパーツの入手が困難であることも心配の種である。
そこでライトリレーを装着して強化することを考えた。
ライトリレーの装着そのものは複雑な回路ではなく、ライトの近くにリレーを設置してバッテリーからの電気をリレー接点を介してライトに入力してやれば良い。
自作でリレーを取り付けようとしていたら、市販のリレーハーネスキットで手ごろな製品を見つけた。
サンヨーテクニカ製の「ハロゲン高効率バルブ用強化リレーハーネスキット」という製品である。
3種類市販されており、GT-5000Bはリレーとハーネスのキット、GT-8000BはリレーハーネスキットにH4バルブ付きで、 GT-9000Bは100/90WのハイワッテージH4バルブ付きである。
オークションで安価に入手できたので、自作するより面倒が無いと思って取り付けてみた。
サンヨーテクニカ製の「ハロゲン高効率バルブ用強化リレーハーネスキット」に使用されている電線は意外と細く、普通の自動車用の電線と変わらない太さで、これでは電圧低下するのではないかと思ったが、実際に装着してみてオリジナルの配線と比較して無負荷時で0.14〜0.18V電圧が上昇した。(リレー無し13.68〜13.87V→リレーあり13.86〜14.01V)
電球を点灯した状態での電圧の違いは0.07Vであった。(リレー無し13.38V→リレーあり13.45V)
照度計があったのでリレーの有無による明るさの違いを調べてみたが、照度計の感度が鈍いのか差はわからなかった。
電球を100/90WのハイワッテージH4バルブに交換して照度計で一番明るい部分の照度を調べるとロービームで約20%の上昇が見られた。
サンヨーテクニカでは「平均100%の光量アップを実現します(純正ハロゲンバルブ比:2倍の明るさ)」としているが2倍とはいかなくてもかなりの強化が見られているし、何より旧車のコラムスイッチの寿命を長くすることが出来るのが嬉しい。

キットに付属のハイワッテージH4バルブの照射光は誰が見ても白色であるが、バルブのコーティングのためにライトの直前ではやや青く光る。以前、車検で検査官がライトの直前に白い紙を当てて「ほら、青いでしょう」と言って不合格にされたことがある。道路運送車両の保安基準(最終改正:平成13年8月31日)の(前照灯等)第三十二条の三に、「 走行用前照灯の灯光の色は、白色又は淡黄色であり、そのすべてが同一であること」とあるのを根拠に不合格にされた。それだけが気がかりだ。

で、実際に装着後に走行した印象ではロービームは明らかに明るくなった。
ただ、ハイビームにするとバルブのコーティングのせいか照射する部分によってはやや照射光の色が違うことに気づいた。
ロービームのときは色のムラは目立たないがハイビームにしたときに色のムラが目立つ。これはキットに付属のハイワッテージH4バルブはバルブの頂上に近い半分と根元の半分に違うコーティングがされているためだと思われる。

なお、マーチのライトはガラス製だから大丈夫だが、キットに付属のハイワッテージH4バルブは発熱量が多いために最近の一部のプラスチックレンズ車には装着出来ないことに注意。また、ハイワッテージバルブをそのまま装着すると回路に負担をかけ、発熱や焼損の恐れがあるので必ず回路を強化してからハイワッテージバルブを装着すること。

今回はサンヨーテクニカ製の強化リレーハーネスを使用したが、同様の強化リレーハーネスはシビエ(SSリミテッド)やボッシュなど数社から市販されている。ハイビームとロービーム用にそれぞれ1個のリレーを使用し、左右2回路で合計4個のリレーを使用するものが多いが、左右の回路を共用してリレー2個で回路を構成しているものもある。

なお、いろいろなH4バルブが市販されているがH4は60/55Wが標準規格であり、消費電力は60/55Wでありながら明るさについて110/100W相当とか、135/125Wクラスとか表示してあるものばかりである。しかも「○○○/○○○W相当」とか「○○○/○○○Wクラス」という文字のみが目立つように大きく表示してあり、本当の電力規格はわからないくらい小さい文字で表示してあるので、本当のハイワッテージバルブを見つけるのはなかなか困難である。
135/125Wクラスとか表示してあるものが、本当に照度でそうなっているのかはわからない。また、能率もバルブによりいろいろと違いがあるので、消費電力と照度は完全に比例するわけでも無いから判断が難しい。しかも視覚的には照射光の色で明るさの感じ方が違う。
最近はコーティングによって照射する光のスペクトルを変えて(選択して)いるので、メーカーの謳い文句もどの光のスペクトルで照度が上がっているというのかわからない。
コーティングの無い(光のスペクトルの広い)バルブの方が運転していて明るく感じると思う。
最近は本当のハイワッテージバルブは少ないが、電力規格で85/80Wや100/55Wというのを先日入手することが出来たので装着して近く試してみたいと思っている。

ウラ技だが、H4バルブのハイビームのフィラメントとロービームのフィラメントを同時に点灯させて明るさを稼ぐ方法もある。
ロービームの照らす範囲とハイビームの照らす範囲を同時に照らすことになり、感覚的に相当明るくなる。
ただし、標準のH4バルブをそのような使い方をすると消費電力は60W+55W、つまり115Wになり、消費電流の増加に配線、バッテリー、オルタネーターが耐えられるかどうかが問題である。またバルブの寿命にも影響があると思うが、さらに発熱量が多くなるので、ガラスのレンズでも温度変化で割れる恐れもあるので決して推奨するものではない。

蛇足だが、ハロゲンバルブについて多少の情報を記載しておく。
ハロゲンランプ (halogen lamp) 、あるいは「ハロゲンバルブ」とも呼ばれる電球は、内部に窒素やアルゴン等の不活性ガスに、ハロゲンガス(主にヨウ素、臭素)を微量加えたものである。 加えられたハロゲンガスのために高温でフィラメントのタングステンと反応し、ハロゲンサイクル、つまりハロゲンとタングステンが反応して昇華したタングステンがフィラメントに戻る作用があるためにフィラメントの蒸発が抑えられより高い温度でフィラメントを点灯させることができるので普通のタングステン電球よりも明るく、寿命も長くなる。
ハロゲンとしてはほとんどの場合ヨウ素(iode)が使われていることからヨウ素ランプとも呼ばれる。
少数ではあるが、臭素(bromide)を使ったランプもある。ヨウ素に比べるとやや赤味が掛かった光を出すようだ。
フッ素(fluorine)や塩素(chlorine)もハロゲンだが、フッ素や塩素はハロゲンランプには使われない。
明るく、かつハロゲンサイクルが働くように2700℃以上の高温で点灯させるので、電球には耐熱性のある石英(Quartz)が使われる。 石英は油分を含むと「失透」という作用により透明度が低下したりクラックが入ったりするので、手の脂を付着させないために電球部分には触らないのが常識である。油分を電球部分に付着させても変化が無かったという意見もあるが、必要が無い限り石英ガラスには触らないのが原則。

自動車用には主としてして下記の形式が使用される。
H1
フォグライトやハイビームなど最もポピュラーなタイプ
H2
最も小型のバルブで奥行きが狭いスペースに装着可能であるが端子が左右に羽のようになっており、破損しやすく接触不良も起こしやすいタイプで、最近はほとんど使われていない。
H3
プラス側だけ線が延びて平型端子がついているタイプでフォグライトやハイビームなどに使われる。
H3a
H3とほとんど同じだが口金の鍔の切り欠きがわずかに違う。H3aはH3の代わりに装着可。H3をH3aの代わりに装着する場合は加工が必要で鍔の上下の切り欠きをヤスリで1ミリ広げる。
H3c
プロジェクター方式のランプに使われることが多い。後ろに端子が平行に出ている。
H3d
H3cとほとんど同じだが口金の鍔の切り欠きがわずかに違う。H3dはH3cの代わりに装着可。H3cをH3dの代わりに装着する場合は加工が必要で鍔の上下の切り欠きをヤスリで1ミリ広げなければならない。
H4
ダブルフィラメントでもっともポピュラーなタイプで頭が銀色または黒色でコーティングされている。60/55Wつまりハイビーム60W、ロービーム55Wが標準規格で、ハイワッテージで100/90wなどというものや、ロービームのみを強化した60/80Wという製品も市販されている。一般的にワット数の大きなものの方が明るいが、消費電力が多く大電流が流れて配線やスイッチに負担がかかるし、発熱量も大きいので最近の車ではプラスチックレンズが溶ける恐れがある。またターミナルの接触不良では発熱を起こしてソケットが溶ける恐れもある。ワット数の大きなものはターミナルの接触不良がなくても発熱量が多いためにソケットが溶けることもある。
市販の製品では規格は60/55Wでありながら明るさは140/130W相当とか130/125W相当とか表示してあるが実際の明るさは本当にそれだけ明るいのかどうかよくわからない。
最近は青系のコーティングをして照射光を青白くしてHID(ディスチャージ)ライトに似たものにするのが流行のようだ。
端子は後ろから見て左側がマイナス、上がロービーム、右がハイビームである。
H4u
H4とほとんど同じだが口金の鍔の出っ張りがわずかに違う。H4の代わりにH4uを装着可。H4uの代わりにH4を装着する場合は鍔の出っ張りをヤスリで3ミリ削り落とす必要がある。
HB3
端子がソケットになっており横からコネクターを差し込む方式。60Wあるいは65Wが多く、ハイビームやスズキ大型バイク、輸入車などに使われる。
HB4
端子がソケットになっており横からコネクターを差し込む方式。頭が銀色または黒色でコーティングされており51Wあるいは55Wが多く、ロービームやスズキ大型バイク、輸入車などに使われる。
H7
H4をややさ小さくしたような形の55Wで頭が銀色または黒色でコーティングされておりロービームに使われることが多い。
H11
端子がソケットになっており横からコネクターを差し込む方式。HB4をややさ小さくしたような形。頭が銀色または黒色でコーティングされており55Wでロービームに使われることが多い。
702K
H4の鍔のみを小さくしたような形状でダブルフィラメント。頭が銀色または黒色でコーティングされており、ソケットはH4と同じかも。

ハロゲンバルブは他に宝石店などの商店のスポット照明やダウンライトに100Vまたは12Vのハロゲンレフ(レフレクタ)電球も使われている。
また、最近は余り使われないがスライドプロジェクターやオーバヘッドプロジェクターにもハロゲンバルブが使われている。


●コメントなどはこちらへメールでお寄せ下さい。
スパムメール防止のために画像でメールアドレスを表示してありますので、半角で入力しなおしてくださるようお願いします。

トップページへ戻る